見えない失敗 — 生存者バイアス

目に見えるのは、生き残ったものだけかもしれません。それだけを見ると、まちがった結論になります。架空の飛行機と1024人のコイン投げ予想で、消えた側を確かめます。

帰ってきた56機の弾の跡(黒い点)です。装甲を足す場所を、あと2か所選びます。

● 帰還機の跡 ✕ 帰ってこなかった機の跡 ▣ 装甲(斜線) ×数字は跡の数

遊び方

上の2つのボタンで、遊ぶ内容を切り替えます。「どこを補強する?」では、帰ってきた架空の飛行機の弾の跡を見て、装甲を足す場所を2か所選びます。選んだら「帰ってこなかった機体を見る」を押します。目標は、守れる飛行機をいちばん多くすることです。「成功者のひみつ」では、「次の1回」を押すたびにコイン投げの予想が1回進みます。10回続けて当てた人が「成功者」です。どちらも「自動」を押すと最後まで進み、説明も出ます。ヒントは、考え方、手がかり、答えの順に出ます。

もっと知る

この作品の機体・数字・人物はすべて架空です。学習用に簡単にした模型で、実際の出来事を再現したものではありません。

見えているのは「選別を通り抜けたもの」だけで、通り抜けられなかったものが見えない。そのせいで結論が偏ることを、生存者バイアスといいます。統計では「選択バイアス」の一種として扱われます。

飛行機の話は、第二次世界大戦中、アメリカのコロンビア大学の統計研究グループにいたエイブラハム・ウォールドが、帰還した機体の損傷から機体の弱い部分を考えた、という仕事が背景にあります。このグループは1943年に覚書をまとめ、1980年に再刊されています。「弾の跡が少ない場所にこそ装甲を」という分かりやすい筋書きでよく語られますが、本人の覚書がその通りに書いていたという確かな裏づけは確認できていません。そのため、ここでは「よく語られる話」として紹介するにとどめ、機体の絵と数字は、このページのために作った架空のものです。

コイン投げの方は、計算で確かめられます。1024人が10回続けて当てる確率(起こりやすさ)は(1/2)の10乗なので、平均して何人が当てるかは 1024 × (1/2)^10 = 1人です。その1人は運だけで選ばれても、「コツ」を語れば立派な成功者に見えます。成功者の習慣を調べるときは、同じことをして消えた人たちも調べないと、原因と結果を取り違えます。

お金の世界でも似たことが知られています。成績の悪い投資信託は閉じられたり合併されたりして記録から消えるので、残ったものだけで平均を取ると成績が実際より良く見えます(1990年代の研究に Brown らと Elton らのものがあります)。どのくらい良く見えるかの数字は、ここでは載せません。

生存者バイアスは「間違い」と責めるより、「消えた側のデータを探してみよう」という合図として使うのがおすすめです。

読みもので詳しく: 見えているのは生き残ったものだけ →