ガルトン・ボードのはなし
玉を1個ずつ落とすと予測できないのに、たくさん落とすと決まった山の形になる。偶然が作る秩序のはなし。
遊んでみるガルトン・ボード
ガルトン・ボードは、釘を千鳥に並べた板の上から玉を落とし、いちばん下の仕切りに溜めていく装置です。玉は釘に当たるたびに、左か右へ落ちていきます。 玉1個がどこに入るかは、まったく予測できません。ところが、たくさん落とすと、真ん中が高く、左右に低くなる、釣り鐘のような山の形にそろいます。
なぜ山の形になるのか
各段で、玉が左右どちらへ進むかは、同じ確率だとします。8段なら、全部で2の8乗、256通りの道があります。 いちばん端の仕切りに入るには、8回すべて同じ方向へ進むしかなく、道は1通りだけです。ところが真ん中の仕切りに入る道は、右へ4回、左へ4回の並べ方なので、70通りもあります。 各仕切りに入る道の数は、端から順に1、8、28、56、70、56、28、8、1。これは、パスカルの三角形の8段目と同じ数です。
このサイトのプログラムで、1段から12段まで、すべての道を実際に数え上げて、各仕切りに入る確率が、この道の数を道の合計で割った値に一致することを確かめました。 段の数が多く、玉の数も多いと、この山の形は「正規分布」と呼ばれるなめらかな釣り鐘に近づくことが、数学で知られています。
ガルトンと、その装置
この装置は、イギリスのフランシス・ガルトンが考えたものです。1870年代に考案され、1889年の著書『自然的遺伝』で図入りで説明されて広く知られるようになった、とされています。年については資料で食い違っていて、はっきりしていません。 本来の名前は「クインカンクス」で、5つの点の並び方を表す古い言葉です。「豆の機械」と呼ばれることもあります。
ガルトンは、ばらばらの偶然が積み重なると、全体では規則が現れることに注目しました。著書の中には、見かけの混沌の中の秩序、という趣旨の節もあります。
ただし、ガルトンは統計学に大きな貢献をした一方で、優生学を唱えた人でもあります。優生学は、現在では誤った考えとして否定されています。 ガルトン・ボードの数学は、そうした考えとは無関係で、確率の仕組みを見せる道具として今も使われています。
解くときの考え方
- 「何回右へ進んだか」だけを見る。どの順番で曲がったかは関係なく、右へ進んだ回数が入る仕切りを決めます。
- 道の数を数える。端へ行く道は少なく、真ん中へ行く道は多い。だから真ん中に玉がたまります。
- 確率を足し合わせる。各段の確率を道に沿ってかけて、同じ仕切りに行く道の分を足すと、仕切りごとの確率になります。
- 段を増やして比べる。段が増えると山がなめらかになり、玉が増えると実際の山が理論の形に近づきます。
このサイトのボードは、衝突や速さまでは計算しない、確率だけの簡略化したモデルです。作品ページでは、段数や玉の数、右へ進む確率を変えて、棒グラフと理論の破線を比べられます。
出典・参考
- Wikipedia — Galton board
- F. Galton, Natural Inheritance (1889)
- Cogniq Fun — src/lib/games/galton-board/engine.test.ts(1〜12段のすべての経路を数え上げ、仕切りごとの確率が二項係数 / 2^段数 に一致すること、8段で 1, 8, 28, 56, 70, 56, 28, 8, 1 / exhaustive path enumeration for 1 to 12 rows matching binomial coefficients over 2^rows; 1, 8, 28, 56, 70, 56, 28, 8, 1 for 8 rows)
更新: 2026-10-17