敷きつめと切り分けで考える
欠けたチェス盤をドミノで、欠けた盤をL字で、4枚でT字を、そして正方形を切って三平方の定理を。ならべて、切って、動かすことが、そのまま証明になる4つの話。
図形を「ならべる」「切る」「動かす」だけで、あることが必ず言える、という考え方があります。ここの4つの作品は、どれもその例です。
欠けたチェス盤とドミノ(このサイトの「欠けたチェス盤」)
8×8のチェス盤の、向かい合う隅を2つ切り取ります。残りの62マスを、2マス分のドミノ31枚でぴったり覆えるでしょうか。
答えは「できない」です。理由は色にあります。ドミノは必ず白1マスと黒1マスを覆います。ところが、向かい合う隅は同じ色なので、残りは白30・黒32と数が合いません。
プログラムで、この盤では色の数のとおり白30・黒32になること、置けるのは最大30枚までで31枚には届かないことを確かめました(domino-chessboard/engine.test.ts)。
この問題は、哲学者のマックス・ブラックが1946年の本で出し、マーティン・ガードナーが1957年に広く紹介した、とされています。 では、白1つと黒1つを欠いたときはどうでしょう。「必ず敷ける」というのがゴモリーの定理です。名前はゴモリーですが、証明が活字になったのは1973年のホンズバーガーの本とされます。 プログラムでも、2×2から8×8までのすべての「白1・黒1」の欠け方で敷けること、同じ色を2つ欠くとすべての場合で敷けないことを、全部の組み合わせで確かめました。
L字で敷きつめる(このサイトの「L字トロミノ」)
今度は、2のn乗×2のn乗の盤から、どこか1マスを取り除きます。残りを、3マスのL字ですきまなく覆えるでしょうか。 できます。盤を4つの四分の一に分けます。取り除いたマスは、どれか1つの四分の一の中にあります。真ん中に、ほかの3つの四分の一に1マスずつかかるL字を1枚置くと、4つの四分の一はどれも「1マスが欠けた、半分の大きさの盤」になります。これをくり返すだけです。 これは、1954年にソロモン・ゴロムが論文にまとめた、とされています。欠けたチェス盤の問題がきっかけでした。
プログラムで、2×2、4×4、8×8などの盤で、どの1マスを欠いても、この手順で敷きつめられることを確かめました。使うL字の数は、2×2で1枚、4×4で5枚、8×8で21枚です。
また、4のk乗から1を引いた数が3で割り切れること(k が1から12まで)も確かめました。割り切れるので、ちょうど足りるのです(l-tromino-board/engine.test.ts)。
T字をつくる4枚(このサイトの「T字パズル」)
4枚の断片で、T字の形をつくります。1900年前後の、広告の景品として広まった遊びです。最も古い例は1898年の薬の広告とされますが、1903年の紅茶の広告を最古とする資料もあり、はっきりしません。 十字のパズルから生まれた、とも言われます。やさしそうに見えて、解くのにかなり時間がかかる人が多いようです。
作品のTは、横8×縦2の棒と、縦5×横2の棒を組み合わせた形で、面積は 8×2+2×5=26 です。4枚の断片の面積は 8・8・3・7 で、合計もちょうど26です。
プログラムで、答えの配置では断片がTの内側に入り、重ならないことを確かめました。台形2枚を入れ替えた置き方も正解になること、1枚をずらすと完成にならないことも確かめました(t-puzzle/engine.test.ts)。
面積が合っていても、組み合わせが合うとは限りません。そこがおもしろいところです。
三平方の定理を切って見る(このサイトの「三平方の定理の切り分け」)
直角三角形の2辺を a、b、斜辺を c とすると、a² + b² = c² です。これを「面積の話」として見ます。a の正方形と b の正方形を切り分けて並べ替えると、c の正方形にぴったりおさまる、というわけです。
この作品では、b の正方形を4枚の合同な断片に切り、a の正方形と合わせて c の正方形を埋めます。3-4-5 の三角形なら、9 + 16 = 25 です。
プログラムで、断片の面積の合計が c² に等しいこと、b の正方形の4枚が合同で面積がどれも b²/4 であること、答えの配置で c の正方形がすきまなく埋まることを確かめました(pythagoras-dissection/engine.test.ts)。
こうした切り分けでの証明で知られるのが、19世紀のイギリスの人ヘンリー・ペリガルです。職業は株式仲買人などで、数学と天文学を趣味にしていました。彼の切り分けの図は、墓石にも刻まれた、と伝えられています。 いつ最初に見つけたか、最初の切り分けの証明なのかは、ここで確かめられなかったので、書きません。
共通すること
- 数えると、できない理由が分かる:白と黒の数が合わなければ、いくら動かしても敷けません。
- 分けて、同じ問題に戻す:四分の一に分けると、小さな同じ問題になります。
- 面積が合うことと、ぴったり合うことは別:面積の合計が合っても、形が合うかは試さないと分かりません。
4つとも、盤や断片の数字はプログラムで確かめたものだけを書いています。
出典・参考
- Wikipedia — Mutilated chessboard problem
- Wikipedia — Tromino
- S. W. Golomb, “Checker boards and polyominoes”, American Mathematical Monthly 61 (1954)
- Wikipedia — T puzzle
- Wood Puzzles — “T” Puzzle
- MacTutor — Henry Perigal Jr
- Plus Maths — Henry Perigal
- Cogniq Fun — src/lib/games/domino-chessboard/engine.test.ts(向かい合う隅を欠くと白30・黒32で敷けない、白1・黒1を欠く組み合わせは2×2〜8×8で全数が敷ける / the opposite-corner board cannot be tiled; every one-white-one-black hole is tileable up to 8×8)
- Cogniq Fun — src/lib/games/l-tromino-board/engine.test.ts(どの1マスを欠いても手順どおりに敷ける、4^k−1は3で割り切れる / any hole can be tiled by the recipe; 4^k−1 is divisible by 3)
- Cogniq Fun — src/lib/games/t-puzzle/engine.test.ts(Tの面積26と4断片の面積の合計 / area 26 and the four pieces sum to it)
- Cogniq Fun — src/lib/games/pythagoras-dissection/engine.test.ts(断片の面積の合計がc²、答えの配置がすきまなく埋まる / pieces sum to c² and the answer fills the square exactly)
更新: 2026-10-17