ものの動きのきほん

電池と豆電球、シーソー、ボール投げ、歯車。身のまわりの仕組みを支える4つの規則と、それを見つけた人たちの話。

ここの4つの作品は、実際の現象をもとにした「教育用の簡略化モデル」です。摩擦や空気の抵抗など、細かい事情は考えずに、いちばん大事な規則だけを見えるようにしています。

電池と豆電球(このサイトの「電池と豆電球」)

電気の流れやすさのルールは、オームの法則「電圧 = 電流 × 抵抗」ひとつです。 ゲオルク・オームが、1827年の著書で、電圧・電流・抵抗の関係を数学で書きました。準備の論文は1825〜26年のものです。熱の伝わり方についてフーリエが作った理論を手本にした、と言われています。 出版された当時はあまり評価されませんでしたが、のちにイギリスの王立協会から賞(1841年のコプリ・メダル)を受けました。抵抗の単位「オーム」が決まったのは1870年代とされています。

このサイトでは、電池1個を1.5ボルト、電球1個を3オームとして計算しています。このサイトのプログラムで、次の数字を確かめました(circuit-basics/engine.test.ts)。

  • 電池1個・電球1個:1.5 ÷ 3 = 0.5アンペア。これを明るさ100%とします。
  • 電球2個を直列:抵抗が足されて6オーム、電流は0.25アンペア。電球はそれぞれ25%の明るさです。
  • 電球2個を並列:電球ごとに電池の電圧がそのままかかるので、どちらも100%のままです。電池から出る電流は合計1アンペアになります。
  • 電池2個を直列:電圧が2倍の3ボルト。電球1個なら、電流は1アンペアで明るさは400%です。
  • スイッチを切ると、電流も光もゼロです。

直列では抵抗が足し算(R = R1 + R2)、並列では逆数の足し算(1/R = 1/R1 + 1/R2)になります。どちらも、オームの法則から導けます。

電圧を水の圧力、電流を水の流れる量、抵抗を管の細さにたとえる説明がよく使われます。ただし、これは教え方のたとえです。オームがそう考えて発見したわけではありません。

シーソーのつりあい(このサイトの「シーソーのつりあい」)

シーソーは、「重さ × 支点からの距離」が左右で等しいとつりあいます。この値を「力のモーメント」と呼びます。 たとえば、左の距離3に2キロなら 2 × 3 = 6、右の距離2に3キロなら 3 × 2 = 6 で、つりあいます。重いものは支点に近く、軽いものは遠くに置くのがコツです。 このサイトのプログラムで、この条件でつりあうこと、重い側が下がることを確かめました(lever-balance/engine.test.ts)。問題3の答えが「左の距離3に2キロ、右の距離2に3キロ」になることもテストしています。

古代ギリシャのアルキメデス(紀元前287年ごろ〜前212年)は、『平面の釣り合いについて』という本で、てこの法則を幾何学で証明した、とされています。 てこ自体は、ずっと昔から使われていました。アルキメデスが「てこを発見した」わけではなく、「てこの法則を理論的に証明したとされる」人です。

「足場をくれれば、地球を動かしてみせる」という言葉も、アルキメデスのものとして有名です。でも、これは4世紀ごろのパップスという人の本に書かれたもので、アルキメデスの死から500年以上あとの記録です。いまの有名な形は、翻訳でできたものでもあります。 ですから、「アルキメデスの言葉として伝わる」と言うのが正確で、「本人がそのとおり言った」とまでは言えません。

はさみ、くぎ抜き、シーソーなども、てこの仲間です。支点・力を入れる点・力がはたらく点の並び方で、3種類に分けられます。

ボール投げの軌跡(このサイトの「ボール投げの軌跡」)

空気の抵抗がなければ、ボールは横には一定の速さで進み、縦には重力で引かれてカーブを描きます。そのカーブは放物線です。 ガリレオ・ガリレイは、1638年に出版した『新科学対話』の「第四日」で、水平には等しい速さ、垂直には落下という2つの動きを合わせると、投げたものの道すじが放物線になることを示しました。 ガリレオより前にも、この問題を論じた人はいたので、「ガリレオが最初に放物線に気づいた」とは言えません。「第四日で放物線であることを証明した」と言うのが安全です。

このサイトのプログラムで、次のことを確かめました(projectile/engine.test.ts)。

  • 同じ速さなら、45度がいちばん遠くへ届きます。
  • 30度と60度のように、足して90度になる2つの角度は、同じ距離に届きます。
  • 秒速20メートルで45度に投げると、約40.8メートル(20×20÷9.8)飛びます。
  • 式から出した距離は、1歩ずつ動きを追うシミュレーションの結果と、0.1%以内で合います。

注意したいのは、これが空気の抵抗がない理想化だということです。実際の野球やサッカーのボールでは空気の抵抗があり、軌跡はゆがみ、いちばん遠くへ届く角度は45度より低くなります。

歯車のしくみ(このサイトの「歯車のしくみ」)

かみ合った歯車は、歯が同じ数だけ順番にすれちがいます。そのため、歯の数が少ない歯車ほど速く回ります。 24枚の歯の歯車が8枚の歯の歯車を回すと、24 ÷ 8 = 3で、3回転します。8枚が16枚を回すと、半回転です。 つながるたびに回る向きは逆になるので、2個なら逆向き、3個なら同じ向きです。あいだの歯車は、出力の速さを変えず、向きだけを決めます。 このサイトのプログラムで、これらを確かめました(gear-train/engine.test.ts)。「3倍の速さで同じ向き」にする3つの歯車の問題で、24-8-8という答えがあることも、テストしています。

歯車で有名なのが、アンティキティラ島の機械です。1900年ごろ、ギリシャのアンティキティラ島の沖の沈没船から引き上げられた、青銅の歯車の装置です。日食や月の満ち欠け、暦を計算する仕掛けだった、とされています。 つくられた年代は紀元前2世紀ごろとされますが、研究者のあいだで説が分かれていて、はっきりとは決まっていません。「世界最古のコンピューター」と呼ばれることもありますが、何をコンピューターと呼ぶかで変わります。

歯車は、速くするほど力は弱くなります。速さと力は、引きかえです。

共通すること

  • ひとつの規則で、多くの場合が説明できる:電圧 = 電流 × 抵抗、重さ × 距離、歯の数の比。
  • 理想化の約束を知る:空気の抵抗や摩擦を考えない、と決めると規則が見えます。そのかわり、実際とは少しちがいます。

4つとも、教育用の簡略化モデルです。電池の内部抵抗や導線の抵抗、シーソーの板の重さ、歯のすべりなどは、ここでは考えていません。

出典・参考

更新: 2026-10-17