数のおもちゃ箱
2進数、素数のふるい、ヨセフスの問題、コラッツ予想。そして動かして考える古典パズル3つ。数の遊びの小さな歴史と、いくつかの意外なつながり。
数はおもちゃになります。2進数、素数、輪になって抜ける人、1に戻る数。そして、駒を動かして考える古典パズル。7つの作品を、短い話でつなぎます。
2進数のカード(このサイトの「2進数のカード」)
1から63までの数を心の中で決めて、6枚のカードに「ある」「ない」で答えるだけで、数が当たります。カードの左上の数は 32, 16, 8, 4, 2, 1 です。「ある」のカードの左上の数を足せば、あなたの数です。 どの数も、カードの組み合わせがただ1通りだからです。これは2進数(0と1だけで数を書くしくみ)の、1桁1桁そのものです。
ライプニッツは、2進算術を説明した論文をパリの王立科学アカデミーに送りました。巻の日付は1703年、印刷は1705年とされています。 中国にいた宣教師ブーヴェが、易の六十四卦の図が2進数の並びに対応していることを手紙で知らせ。ライプニッツは、それを自分の2進数と同じものと読みました。 ただし、「易が2進数だった」とは言えません。それは、ライプニッツがそう読んだ、という関係です。 また、2進法を最初に考えたのがライプニッツ、というわけでもなく、先人がいたとされています。ライプニッツは、2進法を数学として整理して世に広めた一人です。
素数のふるい(このサイトの「素数のふるい」)
表の数から、2の倍数、3の倍数、5の倍数…と順に消していくと、消えずに残った数が素数です。100までの素数は25個、400までは78個です。どちらもこのサイトのプログラムで確かめました。 また、100まででよければ、消すのは2, 3, 5, 7の倍数だけで足ります。100の平方根が10だからです。400なら、20までの素数8個(2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19)で足ります。これもプログラムで確かめています。
「エラトステネスのふるい」の名前は、2世紀はじめのニコマコスの本に出てきます。ニコマコスは、この方法を紀元前3世紀のエラトステネスのものとして伝えています。 エラトステネス本人が発明したかどうかは、はっきり言えません。
輪になって抜ける人(このサイトの「輪になって抜ける人」)
輪になった人が、決まった数ごとに1人ずつ抜けていくとき、最後に残るのは何番の人でしょう。「ヨセフスの問題」と呼ばれます。 1人おきに抜ける場合、人数を2進数で書いて、先頭の1を末尾へ回すと、残る人の番号になります。41人なら 101001 が 010011 になり、19番です。この関係は、人数1000人までの場合をプログラムで確かめました。人数が2のべき乗(2, 4, 8, 16…)のときは、いつも1番が残ります。 先ほどの2進数のカードとつながっています。
名前の由来になったヨセフスは、1世紀のユダヤの歴史家です。本人の記録では、仲間と洞窟にこもったあと、自決する順番をくじで決めたと書かれています。最後にヨセフスともう1人が残ったのは、「偶然か、神の摂理か」と本人は書きました。 円に並んで数える場面は、そこには出てきません。円と数え方の問題として整えられたのは、後の時代で、1612年のバシェの本の問題がその例とされています。
1に戻る数の旅(このサイトの「1に戻る数の旅」)
偶数なら半分に、奇数なら3倍して1を足す。これをくり返すと、どんな数も1に戻るでしょうか。1937年にロタール・コラッツが問いかけたとされる「コラッツ予想」です。 27から始めると、9232まで上がってから、111歩で1に戻ります。1000より小さい数で、いちばん歩数が多いのは871で、178歩です。 また、このサイトのプログラムで、1から99999までのすべての数が1に戻ることを確かめました。いちばん長い歩数は350です。
この予想は、いまも未解決です。コンピューターでの確認は、2025年に発表された論文の時点で、約2.4×1021(2の71乗)より小さいすべての数まで進んでいます。この記録は、これからも更新されるでしょう。 でも、どれだけ多くの数を調べても、すべての数で成り立つことの証明にはなりません。
カエル跳び(このサイトの「カエル跳び」)
緑のカエルと茶色のカエルが向かい合い、一列に並びます。進めるのは前だけで、空いた葉へ進むか、隣の1匹を跳び越します。左右を入れ替えるのが目標です。古くから知られているパズルです。 1匹ずつなら3手、2匹ずつなら8手、3匹ずつなら15手。n匹ずつなら、最短は n × n + 2n 手です。n が1から5までの場合は、このサイトのプログラムで確かめました。中身は、n × n 回の跳び越しと 2n 回の前進です。 後ろへ戻れないので、一度まちがえると二度と完成しない局面があります。
ペグソリティア(このサイトの「ペグソリティア」)
駒を1つ跳び越して取り、盤の上の駒を減らしていくパズルです。33穴の十字形の盤は、中央だけを空けて始めると、31回の跳び越しで駒を1本にできます。最後の1本を中央に残す手順もあります。 15穴の三角形の盤は、どの穴を最初に空けても、13回の跳び越しで1本にできます。全15通りを、このサイトのプログラムで確かめました。
いちばん古い確かな手がかりは、1697年の版画で、ルイ14世の宮廷の貴婦人が盤を持つ姿が描かれているとされています。ライプニッツも1710年にこの遊びに触れたとされます。 なお、「バスティーユの囚人が考えた」という話は、根拠が弱いとされています。最初に現れるのは、事件とされる時期から100年以上あとの1810年です。
懐中電灯の橋渡り(このサイトの「懐中電灯の橋渡り」)
夜の橋を、懐中電灯1つで渡ります。橋は2人までで、2人で渡るときは遅い人に合わせます。1, 2, 5, 10分の4人なら、最短は17分です。 「いちばん速い人が毎回付き添う」作戦は19分かかります。いちばん遅い2人を一緒に渡すのが、17分のコツです。直感が少しだけ罠になるパズルです。 このサイトの検索で出した最短は、広く知られた計算式と、たくさんの時間の組み合わせで一致することを確かめています。
4人(速い順にA, B, C, D)のとき、最短は「2A+B+C+D」と「A+3B+D」の小さいほうだとされています(ロテの2002年の整理)。上の例は、小さいほうが「A+3B+D」で、1+6+10 = 17です。 起源ははっきりせず、1981年の本に載っている例が知られている、というところまでが言えます。
どれも「規則に気づく」遊び
- 2進数・ヨセフス:数を2進数で書くと、きまりが見えてきます。
- ふるい:平方根までで足りる、と気づくと手間が減ります。
- コラッツ:調べるのは簡単でも、証明はまだありません。
- カエル跳び・ペグソリティア:戻れない手があるので、先を読みます。
- 橋渡り:「速い人を使い回す」直感を疑います。
どの作品も、ヒントは考え方から順に出ます。まずは考え方だけ見てみてください。
出典・参考
- Wikipedia — Binary number
- History of Information — Leibniz publishes his binary arithmetic
- Wikipedia — Sieve of Eratosthenes
- Wikipedia — Josephus problem
- Josephus, The Jewish War 3.387–391 (Whiston translation)
- MacTutor — Bachet
- Wikipedia — Collatz conjecture
- D. Barina, “Improved verification limit for the convergence of the Collatz conjecture”, The Journal of Supercomputing 81, article 810 (2025)
- Wikipedia — Peg solitaire
- Wikipedia — Bridge and torch problem
- NRICH — Junior Frogs
- Cogniq Fun — binary-cards / sieve / josephus / collatz / frog-leap / peg-solitaire / torch-crossing の engine.test.ts(本文の数字はここで検証 / the numbers in the text are checked there)
更新: 2026-10-17