エンジン、モーター、発電のしくみ
ピストンが上下する四ストローク、三角のローターが回る回転式、電気で回るモーター、そして回して電気をつくる発電。「動き」と「エネルギー」をつなぐ4つの機械の話。
ここの4つの作品は、実際の機械をもとにした「教育用の簡略化モデル」です。摩擦や熱の逃げ、細かい部品などは省いて、動きとエネルギーの流れだけを見えるようにしています。
四ストロークエンジン(このサイトの「四ストロークエンジン」)
ピストンが上下に動き、その動きをクランク(曲がった軸)が回転に変えます。四ストロークでは、ピストンの1往復ごとに、次の4つの行程をくり返します。
- 吸気:ピストンが下がり、吸気の弁が開いて、燃料と空気が入ります。
- 圧縮:弁を閉じたままピストンが上がり、混ぜた気体をぎゅっと縮めます。
- 燃焼・膨張:点火して燃やし、広がる気体がピストンを押し下げます。力を生むのは、ここだけです。
- 排気:ピストンが上がり、排気の弁から燃えたあとの気体を押し出します。
4つの行程が終わるまでに、クランクは2回転します。出力の行程は、そのうち1回だけです。このサイトのプログラムで、4行程が順に並ぶこと、クランク2回転で1サイクルになること、出力の行程が1回だけであることを確かめました(four-stroke-engine/engine.test.ts)。
歴史では、ドイツのニコラウス・オットーが仲間とともに、1876年に圧縮行程のある四ストロークの機関をつくりました。最初に商業的に成功した圧縮式の機関とされ、この仕組みの理論的な形が「オットーサイクル」と呼ばれる由来です。 ただし、それより前の1862年に、フランスのボー・ド・ロシャが同じ考えの四サイクルの特許を出していた(実機はつくらなかった)とされます。ですから「オットーが四ストロークを発明した」ではなく、「実用にして広めた」と言うのが安全です。
圧縮の強さは「圧縮比」で表します。いちばん縮めたときの体積に対する、いちばん広げたときの体積の比です。乗用車のガソリンエンジンでは、8〜12ほどが典型的だとされます。
理想的なガソリンエンジンの熱効率は、圧縮比が高いほど上がります。理想の式では、圧縮比10で約60%になります(four-stroke-engine/engine.test.tsで、式どおりの値と、圧縮比が高いほど効率が上がることを確かめました)。
ただし、これは摩擦や熱の逃げのない理想の値です。実際のガソリンエンジンは、30%前後(資料により30〜40%台)とされています。
ディーゼルエンジンは、空気だけを強く圧縮して熱くし、そこへ燃料を吹きこむと、熱で自然に燃え出す仕組みです。点火の火花を使うガソリンエンジンとの違いはここにあります。圧縮比は15〜23ほどと、ずっと高くなります。 開発したルドルフ・ディーゼルが特許を取ったのは1892年で、1890年代に実用になりました。実用のピークの効率は、乗用車用で約43%、大型の船用では約55%に達するものもあるとされます。ただし、実際に走っているときの平均は、それより低くなります。
ロータリーエンジン(このサイトの「ロータリーエンジン」)
ロータリーエンジンは、ピストンの代わりに、三角形のおにぎりのようなローターを使います。ローターは、8の字に近い形(エピトロコイド)の部屋の中で回ります。ローターの3つの角には、すきまをふさぐ部品(アペックスシール)がついていて、部屋の壁に押し当たっています。 ローターと壁のあいだに、3つの部屋ができ、ローターが回るにつれて、それぞれの部屋の容積が大きくなったり小さくなったりします。この容積の変化で、吸気・圧縮・燃焼・排気が、部屋ごとにずれて同時に進みます。
数え方がおもしろいところです。ローターは、軸の偏った部分(偏心部)のまわりを、フラフープのように回ります。ローターが1回転するあいだに、出力軸は3回転します。その1回転のあいだに燃焼は3回あるので、出力軸1回転あたり、燃焼はちょうど1回です。
このサイトのプログラムで、ローター1回転で、軸3回転・燃焼3回になることを確かめました(rotary-engine/engine.test.ts)。一般的な四ストロークの1気筒は、出力軸2回転でやっと1回の燃焼ですから、ローターのほうが、軸の回転あたりの燃焼の回数は2倍になる計算です。
このサイトのプログラムは、ローターの3つの角が、いつも壁の曲線の上を通ることも、約1400の角度で確かめています。
歴史では、ドイツの技術者フェリックス・バンケルが、1920年代に回転式の圧縮機を設計し、1934年に回転式の機関で最初の特許を取ったとされます。1950年代に、ドイツの自動車会社と開発を進め、最初の試作機が1957年に動きました。 そのあと、この機関を載せた自動車が1960年代に売り出されました。日本のメーカーも量産で大きな役割を果たしました。 どちらが優れているかは、使う目的や条件で変わります。ここでは、優劣の話はしません。
電動モーター(このサイトの「電動モーター」)
磁石の磁場の中にある導線に電流を流すと、導線に力がはたらきます。コイルにすると、一方の辺は上向き、もう一方の辺は下向きに押されて、コイルが回りはじめます。 ところが、半回転すると、押される向きが逆になってしまいます。そのまま回り続けるために、半回転ごとに電流の向きを入れ替える仕掛けが必要です。直流モーターでは、これを「整流子」とブラシが受け持ちます。ブラシのないモーターは、整流子の代わりに電子回路で電流を切り替えます。
このサイトのプログラムで、半回転ごとに電流の向きが反転しても、回す力(トルク)の向きは同じままであることを確かめました。電池の向きを逆にすると、回る向きも逆になります。また、このサイトのモデルでは、電圧を2倍にすると回転も2倍の速さになり、電圧がゼロなら止まります(electric-motor/engine.test.ts。これは学習用の簡略化で、本物のモーターの性能とは違います)。
歴史では、1821年にマイケル・ファラデーが、王立研究所で「電磁回転」の実験を行いました。水銀の中に立てた磁石のまわりを、電流の流れる導線が回り続けるものです。電流と磁石で、連続した回転が起きることを示した最初の実験の一つとされます。 ただし、これは実用のモーターそのものではありません。「ファラデーが電動モーターを発明した」と言うのは正確ではなく、実用になるモーターの歴史は、別の人たちの仕事が続きます。
発電いろいろ(このサイトの「発電いろいろ」)
発電の中心にある考え方は、モーターを逆にしたものです。コイルのそばで磁石が動くと(つまり、コイルを通る磁束が変わると)、コイルに電圧が生まれます。これが電磁誘導です。 マイケル・ファラデーは1831年に電磁誘導を見つけたとされます(ジョセフ・ヘンリーも、1832年に独立に見つけました)。そのすぐあと、回転する銅の円盤で、電流が続けて流れることも見つけています。1834年には、レンツが誘導電流の向きの決まりを示しました。 コイルを回し続ければ、向きの入れ替わる電流(交流)が得られます。つまり、発電機は「回すと電気が出るモーター」です。
では、何でコイルを回すのでしょうか。このサイトのプログラムで、道すじをたどれるようにしてあります(power-generation/engine.test.ts)。
- 火力・原子力・地熱:多くは、熱で蒸気をつくり、蒸気の力でタービンを回して、発電機を回します。この3つの方式は、蒸気と回転を経由する点が同じです。天然ガスの火力では、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせる方式もあります。
- 水力・風力:流れる水や風が、直接タービンや風車を回します。熱を経由しません。
- 太陽光:光が太陽電池に当たると、中で電子が動いて電圧が生まれます(光起電力効果)。コイルも回転も使いません。電磁誘導とは別の仕組みです。1839年にエドモン・ベクレルが最初に示し、1884年にはチャールズ・フリッツが最初の太陽電池をつくったとされます。
どの方式も、最後は「電気」に行きつきます。そのうち、熱を使う発電では、入れた熱のうち電気になるのは一部だけで、残りは捨てられます。おおまかな目安として、原子力は33〜36%、石炭は約40%、ガス複合は約60%という数字が挙がっています(最新のプラントの値で、既存の設備はもっと低いことがあります)。 なお、これは「熱のうち電気になった割合」で、水力や風力、太陽光の効率とは、意味が同じではありません。ここでは、それらの数字は取り上げません。
共通すること
- 往復から回転へ、回転から電気へ:ピストンの上下、ローターの回転、コイルの回転と、動きの形を変えながらエネルギーを取り出します。
- モーターと発電機は表と裏:電気を入れると回り、回すと電気が出ます。
- 熱を使うものは、熱の一部しか取り出せない:残りは捨てることになります。
4つとも、教育用の簡略化モデルです。燃焼のくわしい化学、潤滑、冷却、電気の損失などは、ここでは考えていません。
出典・参考
- Wikipedia — Four-stroke engine
- Wikipedia — Nicolaus Otto
- Wikipedia — Compression ratio
- Wikipedia — Diesel engine
- Wikipedia — Wankel engine
- Wikipedia — Homopolar motor(Faraday, Quarterly Journal of Science 12, 1821 を引用 / cites Faraday 1821)
- Wikipedia — Electromagnetic induction
- Wikipedia — Photovoltaic effect
- World Nuclear Association — Cooling power plants
- Cogniq Fun — src/lib/games/four-stroke-engine/engine.test.ts(4行程でクランク2回転、出力は1回、理想効率の式 / two crank turns, one power stroke, ideal efficiency)
- Cogniq Fun — src/lib/games/rotary-engine/engine.test.ts(ローター1回転で軸3回転・出力3回 / one rotor turn, three shaft turns, three firings)
- Cogniq Fun — src/lib/games/electric-motor/engine.test.ts(半回転ごとに電流の向きが反転、トルクの向きは変わらない / current reverses every half turn, torque keeps its sign)
- Cogniq Fun — src/lib/games/power-generation/engine.test.ts(熱を使う発電の道すじと、水・風・太陽光の違い / energy paths of each source)
更新: 2026-10-17