一筆書きと魔方陣のはなし

橋を1回ずつ渡れるか、という問いから生まれたグラフの考え方と、亀の甲羅の伝説から版画の壁にまで現れた魔方陣。

どちらも、数や形の「ならび方」の面白さを教えてくれるパズルです。ひとつは、橋を1回ずつ渡って歩けるかという問い。もうひとつは、縦・横・ななめの和がそろう数の正方形です。

ケーニヒスベルクの橋(このサイトの「ケーニヒスベルクの橋」)

昔のケーニヒスベルクの街には、川と島をつなぐ7つの橋がありました。「どの橋も1回ずつだけ渡って、街を散歩できるか」という問いに、 オイラーが「できない」と答えました。オイラーは、この問題を1735年にロシアの科学アカデミーで報告し、論文は1741年に出版されたとされています。

道の形は関係ない、つながりだけを見る

オイラーの考え方は、陸地を「点」、橋を「線」に置きかえることでした。道の長さや曲がり方は忘れて、何がどうつながっているかだけを見るのです。 地下鉄の路線図が、実際の距離ではなくつながり方を描いているのと似ています。

すると、1回ずつ通れる条件がはっきりします。一筆書きができるのは、全体がつながっていて、奇数本の線が集まる点が0個か2個のときです。 0個なら出発点に戻れます。2個なら、その2つの一方から出て、もう一方で終わります。

ケーニヒスベルクでは、4つの陸地に集まる橋の数が5, 3, 3, 3本で、すべて奇数です。だから不可能です。 このサイトの4つの図は、橋を渡る順番をすべて試して、できる図とできない図を確かめました。4つのうち、一筆書きができるのは2つだけです。

オイラーが言わなかったこと

「条件を満たせば、本当に一筆書きができる」という逆の向きの証明を、オイラーは述べていませんでした。完全な証明が出たのは、1873年のヒアホルツァーの論文だとされています。 「オイラーがすべてを証明した」と言われることがありますが、正確ではありません。

この問題の解は、「グラフ理論」のはじまりだとされています。長さや形をぬきにして、つながりだけで考える見方は、位相幾何学(トポロジー)の先ぶれとも言われます。

本物の橋は、その後の戦争などで一部が失われました。いまは橋が5本とする資料があり、その配置では一筆書きができる、とされています。橋の数や名前は、資料によって食い違います。

魔方陣(このサイトの「魔方陣」)

1からn×nまでの数を、重ならずに正方形に並べ、どの行・どの列・2本の対角線の和もすべて同じにしたものが魔方陣です。 このサイトでは、3×3の和は15、4×4の和は34に、そろえます。

3×3は、本質的に1通り

3×3の魔方陣は、並べ方が全部で8通りあります。ところが、回したり裏返したりすると、すべて同じ形です。つまり、形は1種類しかありません。 中央はいつも5になります。これもこのサイトのプログラムで全部調べて確かめました。

この形は、中国で「洛書」と呼ばれてきました。伝説では、洪水を治めた禹のとき、洛水から亀が現れ、甲羅に1から9までの点が並んでいた、と語られます。 これは伝説です。古い書物には「河図・洛書」という言葉が出てきますが、3×3の数の配置だとはっきり分かるのは、紀元前後より後のことだとされています。 「洛書が世界でいちばん古い魔方陣」とも、言い切れません。

デューラーの版画にかくれた年号

ドイツの画家アルブレヒト・デューラーの銅版画「メランコリアI」(1514年)の背景の壁には、4×4の魔方陣があります。縦・横・ななめの和は、すべて34です。 下の行の真ん中には「15」と「14」が並んでいて、制作年の1514が読み取れます。

4×4の魔方陣の和が34になるのは、必然です。1から16までの数をすべて足すと136で、行は4本なので、136を4で割った34になります。 なお、4×4の魔方陣は、12世紀のインドの寺の壁にも刻まれている(和は同じ34)とされていて、デューラーの魔方陣が世界初というわけではありません。

4×4は880通り

1から16を使った4×4の魔方陣は、回転・裏返しで重なるものを同じと数えて、880通りです。17世紀のフランスの数学者フレニクルが数え上げ、その論文は死後の1693年に出ました。 コンピューターのない時代の仕事です。この880通りは、このサイトのプログラムでは数え直していないので、出典(下の資料)の数字としてご紹介します。 3×3が1種類だったことと比べると、4×4で一気に増えるのが分かります。

解くときの考え方

  • ケーニヒスベルクの橋:橋を渡る前に、各陸地に何本の橋が集まっているかを数えます。奇数本の陸地が0個か2個でなければ、あきらめて大丈夫です。
  • 魔方陣(3×3):中央は5です。5を中心に、反対側のマスの数を足すと10になるようにペアを作ります。
  • 魔方陣(4×4):目標の和は34です。1行を決めたら、足りない数を逆算します。

4×4は自由に試すモードです。使った数を別のマスへ入れると、前のマスは空きます。

出典・参考

更新: 2026-10-17